骨粗鬆症とは
骨はカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分を内部に保持しています。このミネラル成分の含有量を計測するのが骨密度測定です。骨密度は20歳代でピークを迎え、加齢とともに減少していきます。骨粗鬆症になって骨密度が低下してくると骨はもろくなり、骨折しやすくなります。転倒した拍子に骨折したり、体の重みで骨折をしていたり、骨が変形して圧迫骨折をしたりして、これがきっかけとなって寝たきりになってしまうことも少なくありません。骨粗鬆症の骨折では痛みなどの自覚症状を感じないケースもあり、“いつの間にか骨折”として気づかれにくいことがあります。
骨粗鬆症の原因
骨は古くなった骨が壊され(骨吸収)、新たに骨がつくられる(骨形成)という新陳代謝を繰り返しています。骨吸収が骨形成を上回って骨がすかすかになってしまうのが骨粗鬆症です。
骨粗鬆症の患者様の8割は女性です。女性はとくに閉経後に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少するとともに、骨密度が急激に下がってきます。エストロゲンが骨吸収を緩やかにする働きを持っているためです。
加えて食事量が減るためにミネラルの摂取量自体も減ったり、腸管からのカルシウム吸収が悪くなったり、カルシウム吸収をサポートするビタミンDを生成する力が弱くなったりすることも原因となります。さらに、骨に負荷がかかると骨形成が活発になります。運動量が減ると骨の新陳代謝のバランスが崩れがちになります。様々な要因が複合的に重なって骨密度は下がっていきます。喫煙や過度な飲酒も骨粗鬆症のリスクを高めるといわれています。
骨粗鬆症の診断
問診で症状や既往症を伺った後、骨密度検査、血液・尿検査などを行って総合的に診断していきます。
血液検査と尿検査では骨の新陳代謝の速度を知ることができます。
女性の方は50歳になる前に検査を
女性の場合、閉経を機に女性ホルモンの影響が大きくあらわれます。骨の新陳代謝においても骨吸収と骨形成のバランスが崩れがちになり、骨吸収が優勢になることで骨密度が下がってきます。
閉経を迎える50歳前後から骨量は急激に減少し始めますので、とくに症状がなくても骨密度の検査を受けてご自身の骨折リスクを確認し、必要であれば早めに予防を開始しましょう。
骨塩定量
骨粗鬆症の評価には、一般的に骨塩定量検査、骨代謝マーカー検査、X線検査、身長測定などが行われます。当院では、被曝が最も少ない手の骨(中手骨)のX線フィルムでの濃度定量法(DIP法)により骨密度の測定を行なってます。
骨粗鬆症の予防と治療
原因でも解説したように、骨粗鬆症は生理的な変化のほか、生活習慣も大きく影響してくる疾患です。治療においては薬物療法を用いることもありますが、まずは生活習慣の改善が大切です。
食事療法
古くなった骨は破骨細胞がこれを壊し、そこに骨芽細胞が新しい骨をつくります。これを骨のリモデリングといいます。この作用が順調に行われるためには、骨を形づくる主成分であるカルシウムやタンパク質を積極的に取ることと、この作用に欠かせない役割を果たすビタミンD、ビタミンKの摂取が不可欠となります。これらは食事を通して積極的に摂取する必要があります。
骨粗鬆症の予防や治療に効果的な食品は以下の通りです。
カルシウム
乳製品、干しエビ、しらす、イワシの丸干し、ひじき、コンニャク、小松菜、モロヘイヤ
ビタミンD
しらす干し、イワシの丸干し、キクラゲ、シイタケ、サケ、ウナギ、カレイ
ビタミンK
わかめ、ニラ、納豆、パセリ、ブロッコリー、小松菜、モロヘイヤ、ホウレンソウ、抹茶
タンパク質、イソフラボン
魚、大豆製品、豆腐、豆乳、納豆
一方、食塩、リン、酸性食品、カフェイン、アルコール、人工甘味料などの過剰な摂取は控えましょう。
ビタミンDは日光浴をすることで体内でもつくられます。運動も兼ねて屋外で過ごすことも骨粗鬆症予防には役立ちます。
運動療法
骨は負荷がかかると、それに負けないように骨量を増やそうとして丈夫になります。大きな負荷をかける必要はありませんので、毎日散歩やウォーキング、階段の昇り降りなどを励行しましょう。片脚立ちは骨を強くするとともにバランス感覚が鍛えられて転倒防止にも役立ちます。また、背筋を伸ばすストレッチも効果的です。
骨粗鬆症の治療中の方や膝に痛みを抱えていらっしゃる方は、事前に医師と相談しながら運動に取り組むようにしてください。
薬物療法
薬物には骨吸収抑制剤、骨形成促進剤、ビタミンD・ビタミンKなどがあります。症状に合わせて最適なものが処方されます。